2011年12月27日

本日より工房でお預かり修理をはじめました、T区Hさまのピアノです。

専門的に使われているYAMAHAのグランドピアノですが、約30年前の楽器で、今後もより性能を発揮してお使いいただくためには、消耗部品の交換など修理が必要で、約1ヶ月お預かりして作業させていただく事になりました。

大まかな修理の内容は
・全弦交換(チューニングピン、アグラフなども含む)
・ハンマー交換(シャンクも、最終的に鍵盤鉛調整ももちろん。)
・サポートアッセンブリー交換
・2本ペダルから3本ペダルへの改造
・ダンパー、鍵盤関係など消耗クロスやフェルトの交換など

修理に使う部品の写真です。全てではありませんが、大まかな物です。
 

国産のアッセンブリー部品や改造キットを使用する部分もあれば、ドイツレンナー社の部品に変える部分も。左の写真はどれを撮しているのかわかりづらいかもしれませんが、低音部巻線弦(オレンジ色っぽい長くつり下げてあるもの)で、国内の巻線職人さんに、ドイツ部品で巻いてもらったものです。

 

2011年12月28日 サポートアッセンブリー

今回、サポートアッセンブリー(以下:Assy.)をそっくり新品に交換します。
(サポート=ウイペンと呼ぶこともある)
色の濃いもの右下のがサポートAssy.のオリジナル部品で、あらかじめ部品メーカーにサンプルとして送り、合うように作ってもらいました。
新しい部品に替えると見た目もとってもキレイになります
でも、新品ゆえの硬さというか、馴染むまでに時間がかかります。

 

そこで、SPSはバーニッシュという作業を行い、慣らし運転後のように快適に動くように調整します。要は、擦れる部分の滑りをよりよくするために擦り、磨き上げる作業です。

 

その後、古いサポートAssy.を外し、日頃掃除ができないレールの奥もキレイに磨いてから、新しい部品を取り付けていきます。

 
低音部は取り付け完了。↑真ん中2枚の左、サポートがレールに対して水平ではなく傾いています。それらも水平になるよう、取り付けてサポート合わせをします。

 

サポートAssy.には、フェルトやクロス、皮、スプリングなど、沢山の部品が組み合わされていて、それらが経年劣化していきます。その細々した部品だけを交換して、木材の部分はオリジナルを使うという修理を行う事もありますが、今回はサポートAssy.ごとの交換にしました。

 

2011年12月29日 ハンマー準備

ピアノは打弦楽器です。打楽器のバチの先が柔らかい物、固い物で音色が変わるように、奏者が持ち替える事がよくありますが、ピアノも弦をハンマーで打つものなので、ハンマーの硬さが重要です。
奏者がその都度ハンマーを交換出来るわけではありませんから、最大限に、弾き方で色んな音色が出せるように、弾力性をつけてあげる作業からはじめます。

 

ハンマーの準備は、お預かり前にはじめていました。
プリボイスといって、最終的な調整はピアノに組み込んでからですが、その前段階として、針を刺し適度な弾力を付けます。その後、ハンマーを整形しておきます。

 

ピアノが届いて、オリジナルのハンマーの角度など細かく測定します。その後、ハンマーに穴開けを行います。

 

その後、ハンマーのテールを加工します。

2011年12月30日 シャンク交換

ハンマーシャンクの交換です。
ハンマー同様、シャンクもドイツレンナー社製を使用します。
シャンクは、細長い方のものです。ゴルフクラブで言うと、シャフトの様なものでしょうか。

 

シャンクは、適度な硬さとしなりが必要で、樺(カバ)やシデ材が使われます。
木材そのものの硬さで、低音部に適したもの、高音部に適したものなど、選別してから取り付けです。

 

まずは、基準に残しておく部分以外を、1本おきに交換して、シャンクが真っ直ぐに上がるか確認して調整します。真っ直ぐに上がるか、右や左に走っていないかを細かく見て、走っているものは、のり紙(裏面に糊がついている)細い紙をフレンジと呼ばれる部品の裏側に貼り調整します。のり紙の厚さや長さを変えて貼ります。

 

その後、残りのシャンクも交換して、同様に走りをなおして、真っ直ぐ上がるようにしました。基準で残してあるものと比べるとやはり新品部品はキレイですね

 

サポートもシャンクも交換してキレイです。シャンクの裏側についてるローラー(黄色い皮の丸い部品)ですが、ここも消耗部品で、このローラーだけを交換する事もありますが今回はシャンクごと交換しました。基準取りのために残してある古いシャンクのローラーは皮がすれてつぶれています。

 

ハンマーウッドのシェイピングも終了し、ナンバリングを行いハンマー付けの準備が整いました。

本日、ハンマー付けを行います。接着剤、膠(ニカワ)の準備を行いました。膠は温度の設定がポイントです。調乳ポットを利用して適温に保温しながら行います。

 

2011年12月31日 キャプスタン交換

鍵盤の上に付いている、キャプスタンスクリューと、バックチェック(茶色の皮の部品)を交換します。
左側が新しい部品で、右側はオリジナルでついていたものです。
昨日の日記でキャプスタンスクリューを交換している道具を紹介しましたが、キャプスタンスクリューは消耗しているわけではありませんが、タッチの向上のために交換します。

 

キャプスタンは、鍵盤を押した時に、サポートを押し上げる役目をしますが、この部分のカーブ(丸み)がポイントです。(ぜひ写真を拡大して違いをご覧ください)
ヤマハは平らに近いけれど、スタインウェイは丸く、滑らかに持ち上げる事ができるのです。少しでも理想のタッチを求めるため、スタインウェイの純正キャプスタンボタンに交換します。
タッチの改善に役立つため、頭の部分だけを改善するパーツも発売されているほどです。(R-bit) キャプスタンのネジピッチは、スタインウェイの方が0.1mm細かいので、微調整も可能です。ネジ穴の加工は必要なくそのまま交換できます。

 

バックチェックは皮の消耗があり交換しました(ドイツレンナー社製に)
 

 

2011年12月31日 ハンマー付け

鍵盤関係の交換作業と同時進行で、ハンマー付けを行っておりました。
膠(にかわ)にてハンマー接着。その前に、ハンマーの穴をスパイラルリーマーでさらいます。
 

 

膠を適量、穴とシャンクに付けて、クルクル回して角度など揃えながら付けていきます。

 

ハンマー付けが終わったら、細かい微調整というか、微修正として、シャンクをアルコールランプであぶり、角度修正を行い仕上げです。

 

2012年01月05日 解体!?

ハンマー付けが終わり、余計なシャンクをカットしました。

 

弦合わせをし、ざっと整調をし、オリジナルの弦のまま、音色を聴き、ハンマーの弾力をチェックし、ちょっと足りない所へ針を刺します。

 

まず、弦の上にのっているダンパーという、止音のための部品を外してから、いよいよピアノ弦を外します。全体で約20トン掛かっている張力を、少しずつバランス良くピンを緩めていきます。 弦圧測定もあらかじめしておきます。

 

 

緩めた後、弦を外し、チューニングピンも抜きます。

 

 

アグラフも外します。

 

弦枕(赤いフェルト)も剥がし、掃除します。

 

2012年01月07日 張弦準備

写真は張弦準備完了後です。その後すぐに張弦に入れる訳ではなく、張弦に入るまでにも多くの事をしています。

 

ベアリング研磨 今回の修理では、響板やフレーム塗装はなく、フレームを外さないため、裏側のベアリングは鏡を見ながらの作業です。

 

ベアリング研磨は、セクション全部の張替時しか行えません。普段1本だけ弦が切れた場合などは研磨できず、深い溝ができていると断線の原因にもなります。度々切れる方はセクション単位での張弦をおすすめしています。

 

チューニングピンのトルクが揃うように、穴をキレイにし、ピンゲージで1穴ずつチェックします。

 

アグラフ取り付け ネジですが、締まりきる所でちょうどいい角度に来るものを選ぶのに、現物合わせで、1本ずつとにかく合う物を探していきます。 これまでの最多記録を更新し、今回1つのアグラフのために、40個目でやっと合った所もありました

 

最終的な微調整は、弦に対してきちんと垂直な角度になるように1本ずつ合わせていきます。

 

ピンブッシュも新しいものを入れ、穴を開けます。

 

アリコートを磨いたり、ヒッチピン、駒ピンも磨きました。弦の番手が読めなくなっていたのでハンコで印字しました。アリコートは弦圧を見て、高さを調整しました。ダンパーガイドレールもキレイにし、面取り、穴のテフロン加工やコテあても行いました。

 

弦枕を加工します。オリジナルをみつつ、現物合わせで作り貼りました。フレーム貼りフェルトなども新しく貼りました。

 

2012年01月10日 張弦

いよいよ張弦に入りますが、まずはチューニングピンの選定から。
サイズに多少のバラツキがあるので、仕分けてから使用します。

 

芯線(中・高音部)はドイツ・レスロー社の2Kg巻きの弦を使用。

 

 

エアー工具のピンストライカーを使用し、チューニングピンを打ち込みます。

以前は大きなハンマーを使用していましたが、手や肩にかかる負担は半端ありません。体力勝負の修理の仕事ですが、道具も使いようです。打ち込みはかなりの爆音のため、耳を守りながらの作業です。

 

ピンの高さや、巻口を揃えたりと、弦を張り終わった後の調整に時間がかかります。

中高音部を張弦後、低音部巻線の張弦に入ります。

 

低音部の巻線弦は、ヒロエピアノハウスさんで、レスロー社の芯線に、ドイツ・デーゲン社の軟銅で巻いてもらいました。
 

 

弦を止音するダンパーの修理作業に入りました。
新しい弦を張り替えた際には、フェルトに古い弦の跡が付いてしまっているため、ダンパーフェルトの貼り替えが必要です。まずは、フェルトを剥がします。ついでにダンパーヘッドやワイヤーの掃除も行います。まだ途中ですが…
 

 

2012年01月13日 ダンパー関係

写真は、本日夕方の模様です。ダンパーも付き、ピアノに戻ってきた〜って感じです♪

 

ダンパー関係の仕上げの様子です。
ダンパーは弦の上に乗っていて、弦の振動を止める(音を止める)ための物です。
ダンパーペダルを踏んでる間や、鍵盤を押している間は、ダンパーが弦から持ち上がり、弦が振動するので音が鳴ります。古いフェルトを剥がし、ダンパーヘッドやワイヤーは磨いてありました。ダンパーフェルトは弦の本数や太さや長さによって、形や大きさが異なります。主に4種類の形のものを貼っていきます。

 

ダンパーワイヤーを磨いたりしている間に、同時作業をしていた、ダンパーブロックの交換の模様です。
今回、2本ペダルから、ソステヌート付きの3本ペダルに改造するため、ダンパーブロックを、タブリップ(羽根)付きの物に交換します。古いブロックを外し、新しいものに入れ替えます。

 

新しいフェルトを貼っていきます。
新しいブロックは2本ペダル用のものよりも長いため、余分なダンパーワイヤーはカットしながら、弦に乗せてフェルトの接着のため、オモリを乗せて圧着していきます。

 

中音部の低い方で使われている、新しいW型のフェルトは、少し開いてならしてあげないと、うまく弦とフィットしないので、調整が必要です。

 

一応、ダンパーフェルトの貼り替えが終了した所です。
細かい調整はまだ残っていますが、形になってきました

 

2012年01月13日 ハンマー&鍵盤関係

ハンマー付け後の仕上げ作業の模様です。
余分なシャンクをざっとカットしたままでしたので、キレイにし、テールファイルも行いました。

 

鍵盤まわりの模様に続きます。
鍵盤のフロント、バランスピン、パンチングクロスの交換の模様です。

 

鍵盤のフロントブッシングクロスがすり減り、ピンをまわしてガタを減らしていましたが、それも限界でした。(クロスの交換はまた数日後に…)

 

古いピンと、これから入れるピンを並べてみました。

 

鍵盤筬の奥側のクロスも貼り替えました。

 

鍵盤の奥にあるダンパーレバークッションフェルトの貼替えも行いました。
鍵盤を押すのと同時にダンパーを持ち上げる部分です。

 

鍵盤の長さが白鍵と黒鍵で異なるため、鍵盤を押した時、後ろの持ち上がる量が異なります。
そのわずかな差を揃えるため、白鍵の後ろには、フェルトの下に厚紙を貼り、高さが揃うようにしました。

全部貼替えましたが、全て貼替えた後の写真は撮りわすれました

 

2012年01月17日 黒鍵盤 貼り替え

黒鍵がオリジナルはベークライトという合成樹脂ですが、黒檀鍵盤にする事で、指に吸い付くような!? 弾き心地に改善されるので、黒檀の黒鍵に貼り替えます。ヒートガンで温めて剥がしていきます。きちんと接着剤が溶けるまであたためてから剥がさないと、木部がやられてしまいますので、気長に剥がしていきます。

 

日頃は白鍵に挟まれて、上の剥がした部分しかほとんど見えませんが、黒鍵はこんな感じで貼られているんです。

 

黒檀黒鍵と、オリジナルを並べました。高級感が違います♪
合成樹脂は中が空洞になっています。 高さが違うので、僅かに鍵盤側の木部を削って調整後に貼りました。

 

2012年01月20日 ペダル改造

今、修理中のピアノは2本ペダルでしたが、オーナーさまより、ソステヌート付きの3本ペダルにしたいとの事で改造します♪

ソステヌートキットの一部です。

実際にはダンパー関係のブログの中で、細かい改造を行っています。

 

ソステヌートペダル(真ん中)は、特定の音だけ伸ばしたい時に使います。
特定のダンパーが上がっている時(鍵盤を押している時)に真ん中のペダルを踏むと、その部分のタブリップと呼ばれる羽が引っかかり、そのダンパーだけを解放する事ができるように、取り付けます。

 

中の機構とペダルを連動させるため、棚に穴を開けます。

 

3本ペダルに改造完了!なんだかこれだけだと簡単に見えますが、実際にはダンパー関係のブログの中で、改造を行っていますが、それが細かい作業で大変なんです

 

2012年01月27日 鍵盤ブッシングクロス貼替

よく弾きこまれたピアノは横ブレ&雑音防止のクロスがすり減ってガタが出ていました。
ガタを減らすために応急的にピンを曲げていましたが、かなりの角度でした(すでにピンは新しい物に交換済み)

 

クロスに蒸気をあて、剥がします。剥がしたあと接着剤ののこりなどを掃除してから、新しいクロスに貼り替えます。(ドイツレンナー社のクロスを使用)

 

仕上げはコテをあてて落ち着かせます。コテのサイズも各種揃えてあります

 

鍵盤横の汚れもキレイにします。右がキレイにした後。

 

この日は、大雪の翌日。着雪注意報で、細い紐(緑のカーテン用がまだそのまま)にも雪が!
工房のまわりの景色です。この日の午後、甲府で仕事でしたが、御坂あたりからは雪のゆの字もなく、まったくの景色の違いに驚きました

 

2012年01月28日 鍵盤鉛調整

ピアノの修理で、ハンマーを交換したり、アクション部品の交換など今回はキャプスタンや、黒鍵を黒檀にしたりで、鍵盤を押した時にかかる重さが変化しています。
ですので、鍵盤鉛調整は必須です。
そもそも、大量生産のピアノは、だいたいの基準で一定の位置に鉛を入れてあるため、理想的なピアノは少ないのですが…修理を機に本来あるべき理想のバランスにします。

鍵盤はシーソー運動をしています。下がる重さ、上がる重さのバランスで弾きやすさが変わります

ダウンウェイト、リフトウェイトの理想的なバランスが取れる位置をまず探します。
その位置にただ鉛を入れればokというわけではなく、奥に入れて良くなるなら、奥に入れるよりも、手前を抜けばバランスを取ることが可能です。
今回はエクセルで計算式を作り出し、距離や鉛の大きさなどの数値を入れると、どこの鉛をどれだけ削ればいいのかなどが出るようにしたため、作業がはかどりました

 

左の鍵盤は少し削ったので、ピカッと光ってるのがわかりますか?
右の鍵盤には小さな鉛を入れました。

 

新しく鉛を入れた所、削った所は鉛が抜けたりずれたりしないように、かしめます。

 

鉛を完全に抜いた物には埋木をします。

 

2012年01月30日 仕上げ中

お預かり修理中のピアノも、修理そのものは終わり、仕上げの調整中です。
納品後にも安定してお使いいただけるように、ひたすら弾きこみ、調律・調整を繰り返し行います。屋根も付けて、整音作業の仕上げもしました(最終仕上げは納品時にお部屋の響きに合わせて行いますが)

 

これまでの修理記事の中にあげていなかった写真も少し載せたいと思います。
鉛調整より前に、鍵盤の調整は行っています。クロス類を新しくしたので、鍵盤の高さも基準から取り直し調整。大きく調整するときは、アクションの出し入れが大変なので、作業台の上で、アクションも外し、アクションが載った状態とほぼ同じになるように、鍵盤の奥に専用の鉛を装着して作業します。

 

オーナーさまからのご要望で、免税マークも剥がしました。
今回はじめて剥がしましたが、透明のシールに金文字だったんですね!
黒地のシールだと思っていました。

 

2012年02月07日 ピアノ搬出

グランドピアノは脚やペダルを外し、立てて布団にくるまれ運ばれて行きます。
また近日中に、最終仕上げ調律へお伺いします。


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